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広島高等裁判所 昭和24年(う)559号 判決 1950年2月17日

被告人

林彌市

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人高橋武夫の控訴趣意第二点第三点について。

苟も行爲当時に於ける諸般の情況に照し特定し得べき議員選挙に付特定の議員候補者に投票を得若くは得しめ又は得しめざるの目的で戸別訪問をすれば衆議院議員選挙法第九十八條違反の罪を構成すべく其の訪問の時期が議員候補者に於て其の届出をした後であると否と又立候補の決意前であると否とは同罪の成否に影響を及ぼす樣な事項ではないから、特定の村会議員選挙に関し未だ自己が立候補の届出をしない前に選挙人方を戸別訪問して、自己が立候補の届出をしたならば、自己に投票をして貰いたい旨依賴したときでも右法條違反の罪の成立を妨げるものではない。又選挙人に投票を依賴するに当つて自己が既に立候補届出をしたか否かを明らかにする必要はなく、たとい未だ立候補届出をしてゐないにも拘らず恰も既に立候補の届出をしたかの樣な言葉を使用したとしても、結局特定の選挙に関し当選を得る爲投票を依賴するものである趣旨であれば右法條違反の罪を構成することは論をまたないところである。而して原判決摘示の証拠に依れば被告人が昭和二十四年二月二十八日に施行された山口縣玖珂郡川越村村会議員選挙に関し自己の当選を得る目的で河口フミ方及岡本マチヨ方を夫々訪問し同人等に対し自己に投票されたい旨依賴したものであることは優に之を認め得るから、たとひ被告人の立候補届出が昭和二十四年二月十九日であつて原判決認定の被告人の戸別訪問の所爲が其の届出前であつたにしても又原判決が被告人の戸別問を認定する証拠とした証人河口フミ及岡本マチヨの各供述中に被告人が同人等に既に立候補の届出をしたかの樣に述べた旨の供述があつたとしても原裁判所が被告人の所爲に対し衆議院議員選挙法第九十八條に違反するものと認定し同法條を適用したのは眞に相当であつて原判決には何等論旨の樣な法律の適用を誤り又は事実を誤認した違法はない。

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